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組合・業界団体が独自のBtoBオークションを持つべき理由〜会員向けクローズド取引の設計〜

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目次

  1. なぜ今、組合・業界団体に「独自オークション」が必要なのか
  2. 外部プラットフォーム依存がもたらす「見えないコスト」
  3. クローズドBtoBオークションが生む5つの価値
  4. 業界別・導入事例と実際の数値
  5. クローズドオークション設計の7つの要素
  6. 会員審査・与信管理の設計方法
  7. 導入ロードマップ:合意形成から本稼働まで
  8. よくある反対意見とその回答
  9. まとめ:組合が「取引インフラ」を握ることの意味

1. なぜ今、組合・業界団体に「独自オークション」が必要なのか

組合・業界団体が直面している構造的な課題

日本全国の組合・業界団体が今、共通した問題に直面しています。

課題1:リアル開催の限界

全国各地でリアル開催されてきたセリ市・展示会・業者交流会が、参加者の高齢化と減少により存続が困難になっています。「遠方から会場まで来られない」「後継者がいないので参加できない」という声は年々増えています。コロナ禍でその問題が一気に顕在化しましたが、対面回帰後も参加者数が戻らない組合は多い。

課題2:会員の取引が外部プラットフォームに流れている

組合員が個別にYahoo!オークション、メルカリ、各種BtoB ECサイトで取引を始めた結果、組合を経由した取引量が減少しています。組合としての情報収集力・交渉力・手数料収入が失われ、存在意義が問われる状況になっている団体も少なくありません。

課題3:取引データが組合に蓄積されない

会員が個別に取引した場合、その取引データ(何が、いくらで、誰に売れたか)は外部プラットフォームが保有します。組合として「自分たちの業界の相場」「主要バイヤーの購買動向」「季節別の需要変動」といった市場情報を把握できなくなっています。

課題4:手数料が業界外に流出している

組合員が外部プラットフォームを使うたびに、8〜12%の手数料が業界外の企業に支払われています。組合員50名が月商20万円をYahoo!で販売すると、年間で業界外に1,056万円が流出している計算になります。この資金が組合内に留まれば、組合サービスの充実・会員への還元・業界全体の発展に使えます。


「独自オークション」が解決策になる理由

これらの課題を同時に解決できるのが、組合・業界団体が主体となって運営するクローズドBtoBオークションです。

  • リアル開催の限界 → オンライン化で全国の会員が参加可能に
  • 外部流出 → 組合プラットフォームに取引を集約
  • データ不在 → 取引データが組合に蓄積される
  • 手数料流出 → 組合が取引コストをコントロールできる

これは単なる「デジタル化」ではありません。組合が業界の取引インフラそのものを握るという、戦略的な転換です。


2. 外部プラットフォーム依存がもたらす「見えないコスト」

手数料コストの実態

組合員が外部プラットフォームで取引する際にかかる手数料を正確に把握している組合は多くありません。まず数字を確認しましょう。

主要プラットフォームの手数料:

プラットフォーム 販売手数料 決済手数料 合計
Yahoo!オークション 8.8% 3.6% 12.4%
メルカリ 10% 込み 10%
各種BtoB ECモール 3〜10% 別途 5〜15%
自前のクローズドオークション 0% 3.6% 3.6%+月額固定費

組合員全体での年間流出額のシミュレーション:

組合員数 月商平均 合計月商 Yahoo!年間手数料(8.8%) 独自サイト年間コスト 年間節約額
20名 50万円 1,000万円 1,056万円 472万円 584万円
50名 20万円 1,000万円 1,056万円 472万円 584万円
30名 100万円 3,000万円 3,168万円 1,308万円 1,860万円

※独自サイト年間コスト=エンタープライズプラン(月額3.3万円)×12+ドメイン費6,000円+決済手数料(3.6%)

組合員一人あたりの節約額(月商1,000万円・50名の例):年間約11.7万円

これは組合費の削減・還元として会員に訴求できる数字です。

手数料以上に深刻な「データ流出」の問題

お金の流出より長期的に深刻なのが、取引データの流出です。

外部プラットフォームで取引が行われると、以下の情報が組合の手に届きません。

  • 会員の商品が何に、いくらで落札されているか
  • どの地域のバイヤーが、どの商材を買っているか
  • 季節・時期によって価格がどう変動するか
  • どの会員の商品が高値で評価されているか

これらは本来、業界団体が把握して会員に提供すべき「市場情報」です。外部プラットフォームはこのデータをAI・マーケティングに活用して自社のビジネスを強化しています。組合が知るべき自分たちの業界のデータが、他社の資産になっているのです。

「プラットフォームリスク」の見落とし

外部プラットフォームへの依存には、突然の規約変更リスクが伴います。

Yahoo!オークションの販売手数料は2018年に5.4%から8.8%へ、実質63%の値上げが行われました。告知からわずか2ヶ月での実施でした。組合員全員がこの影響を受けながら、組合としては何もできない——これが「プラットフォーム依存」の実態です。

自前のオークションプラットフォームを持てば、手数料を自分たちで設定し、必要に応じて変更できます。


3. クローズドBtoBオークションが生む5つの価値

組合が「クローズド(会員限定)」のBtoBオークションを持つことで生まれる価値は、コスト削減にとどまりません。

価値1:取引の「品質」が格段に上がる

一般公開のオークションでは、誰でも入札できます。支払い能力のない個人、悪意のある業者、業界の実態を知らない素人——これらが混在することでトラブルが増え、真剣なバイヤーが離れていきます。

クローズドオークションは会員審査を経た事業者だけが参加できる場です。「この相手は業界の事業者だ」という前提で取引が進むため、信頼性が格段に高まります。実際、畜産農協がBtoB専用オークションに移行したところ、未払い率が8.2%から0.3%に激減した事例があります。

価値2:「適正価格」が自然に形成される

組合員が個別に価格交渉すると、情報の非対称性(バイヤー側が相場を知っていて売り手が知らない)により、本来の価値より安く売ってしまうケースが多発します。

クローズドオークションでは、複数のバイヤーが同じ商品を競います。「この商材の本当の価値を知っているバイヤーが最高値をつける」という仕組みが、自然に適正価格を形成します。漁協の事例では、クローズドオークション導入後に平均落札価格が22%上昇しました。

価値3:業界の「市場情報」が組合に蓄積される

自前のプラットフォームで取引が行われると、すべての取引データが組合に蓄積されます。

蓄積できるデータの例:

  • 商材ごとの月別・季節別の平均落札価格推移
  • 活発に購入しているバイヤー企業の一覧
  • 落札競争が起きやすい商材カテゴリ
  • 地域別の需要動向
  • 会員別の販売実績ランキング

このデータは「業界の相場情報」として会員に提供でき、組合の存在価値を高める情報サービスになります。

価値4:「組合員の団結力」が強化される

バラバラに外部プラットフォームで取引していた組合員が、共通のプラットフォームで取引するようになると、自然に連帯感が生まれます。

「あの組合員がこの商材を出品しているときに入札する」「今月のオークションで仕入れしよう」——この習慣が、組合活動への参加意識を高め、会議への参加率・組合費の納入率にも好影響をもたらします。

価値5:組合の「収益基盤」が生まれる

組合が運営するオークションプラットフォームでは、取引手数料を組合が設定できます。たとえば取引金額の1〜3%を「組合運営費」として徴収する設計にすれば、会員数と取引量に比例した安定的な収益が生まれます。

この収益を組合サービスの充実・若手会員支援・業界PRに使えば、組合への帰属意識がさらに高まるという好循環が生まれます。


4. 業界別・導入事例と実際の数値

事例1:畜産農業協同組合(牛・豚のセリ市)

導入前の課題: 県内5ヶ所でリアル開催していたセリ市の参加者が年々減少。遠方の肥育農家は交通費・時間のコストがかかり参加が困難でした。コロナ禍での対面開催中止を契機に、オンライン化を決断。

導入したクローズドオークションの設計: 会員登録時に組合加盟証明・農業経営体証明の提出を必須化。動画配信で牛の歩き方・肉付きをリアルタイム確認できる仕組みを整備。血統書・健康診断書をPDFで添付必須とし、ロット単位(10頭まとめてなど)の入札に対応しました。

導入後の成果:

  • 参加業者数:3.2倍に増加(全国から入札可能に)
  • 平均落札価格:18%上昇(競争入札で適正価格化)
  • セリ市開催コスト:年間420万円削減(会場費・人件費)
  • 成約率:78% → 92%

成功の核心:「現物を見ないと買えない」という業界常識を、複数角度の高画質動画と獣医師による健康証明書のデジタル化が打ち破りました。参加エリアが県内から全国に広がったことで、競争が生まれ価格が上昇しました。


事例2:漁業協同組合(鮮魚の超短時間セリ)

導入前の課題: 早朝5時からのリアルセリへの参加者が高齢化で減少。地元の仲買人しか参加できず競争が少なく、廃棄率が8.3%に達していました。

導入したクローズドオークションの設計: 「朝4時出品→6時終了」という超短期オークションを設計。鮮度情報(水揚げ時刻・保管温度)をリアルタイム更新。落札と同時に冷蔵配送を手配する連動システムを構築。ロット分割入札(100kgのうち30kgだけ入札可能)に対応しました。

導入後の成果:

  • 参加業者数:4.7倍に増加(全国の飲食店・加工業者が参加)
  • 平均落札価格:22%上昇
  • 廃棄率:8.3% → 1.2%に激減
  • 漁協全体の年間売上:1.9倍(6,800万円)

成功の核心: スピードが命の鮮魚取引で「4時出品→6時落札→即日配送」というオペレーションを実現。クローズド化で全国の飲食業者・加工業者が入札できるようになり、従来は地元相場で取引されていた魚が全国市場の価格で売れるようになりました。


事例3:和牛生産農家組合(子牛のBtoB取引)

導入前の課題: 地元の家畜市場のみで子牛の競りを実施。参加できるバイヤーは地元近隣の肥育農家約20名に限定され、競争が生まれにくい状況でした。市場への輸送コストも組合員の負担になっていました。

導入したクローズドオークションの設計: 組合員のみが参加できる会員制BtoBオークションを開設。血統書・健康診断書をPDF添付必須とし、全国の肥育農家がオンラインで入札できる場を構築しました。

導入後の成果:

  • 参加バイヤー:地元20名 → 全国180名
  • 子牛の平均落札価格:15%上昇
  • 市場への輸送コスト:年間120万円削減
  • 精算事務の自動化により事務作業が半減

事例4:中古建設機械業者間取引(業界団体主導)

導入前の課題: 建機ディーラー・解体業者・建設会社が個別に中古重機を売買しており、取引の透明性が低く、「安値つかみ」「高値売りつけ」のトラブルが業界内で慢性的に発生していました。

導入したクローズドオークションの設計: 業界団体が主体となり「業界団体会員のみが参加できる」クローズドプラットフォームを構築。稼働時間(アワーメーター)・整備記録・動作確認動画の添付を出品基準として義務化。

導入後の成果:

  • 在庫回転率:2.5倍向上(平均在庫期間180日→72日)
  • 平均落札価格:従来の個別交渉比12%高い価格で成約
  • 新規取引先:年間180社増加
  • 業界内のトラブル件数:70%削減

5. クローズドオークション設計の7つの要素

組合・業界団体が独自のクローズドBtoBオークションを設計する際、考慮すべき7つの要素があります。

要素1:参加資格の設計

「誰が入札・出品できるか」の定義が、オークションの信頼性を決定します。

参加資格の設計パターン:

パターン 内容 適した業界
組合員限定 当該組合の会員のみ 農協・漁協・商工組合
業界有資格者限定 古物商許可・食品衛生責任者等の保有者のみ リサイクル業・食品業
法人限定 個人事業主を除く法人のみ 建設業・製造業
認定業者限定 団体が独自に認定した事業者のみ 高付加価値商材の業界
招待制 既存会員の紹介がないと参加不可 高級品・機密性の高い取引

参加資格を厳しく設定するほど信頼性は高まりますが、参加者数(=競争)が減るトレードオフがあります。初期は「組合員+業界有資格者」まで広げ、運営が安定してから絞る段階的設計が現実的です。

要素2:出品基準の設計

「何を出品できるか」の基準を明文化します。基準がなければ、品質の低い商品が混入し、プラットフォームの信頼性が損なわれます。

出品基準の例(畜産の場合):

  • 健康診断書の添付を必須とする
  • 写真は最低4方向から撮影
  • 血統書がある場合はスキャンして添付
  • 動画(歩行・体型確認)を必須とする
  • 最低重量・月齢の基準を設ける

出品基準の例(中古機械の場合):

  • 稼働時間(アワーメーター)の記録を必須とする
  • 整備記録の添付を推奨
  • エンジン始動・主要機能の動作確認動画を必須とする
  • 傷・錆の状態を接写で記録

出品基準を高く設定することで「このプラットフォームに出品されている商品は信頼できる」という評判が形成され、優良バイヤーが集まります。

要素3:価格設定と入札方式

BtoBオークションで使われる入札方式には複数あります。商材と業界の特性に合わせて選択します。

入札方式の比較:

方式 概要 向いている商材
通常入札 最高入札額が落札 一般的な競売
封筒入札(シールドビッド) 全員が一度だけ入札、最高額が落札 不動産・大型機械
降り値方式(ダッチオークション) 高値から始めて最初に応じた人が落札 大量商材の速攻売却
最低落札価格設定 設定価格未満では落札されない 商材の最低価格を守りたい場合
ロット入札 複数まとめての入札 食品・農産物・部品

BtoBでは「封筒入札」が使われるケースも多いです。価格が非公開で進むため、入札者が他の入札額に惑わされず、自分の真の評価額を入力できる利点があります。

要素4:決済と与信の設計

BtoBオークションの決済は、BtoCと大きく異なります。

BtoB決済の設計パターン:

パターンA:即時決済(低リスク・低摩擦) 落札後にクレジットカードまたは銀行振込で即時支払い。手続きがシンプルですが、大口取引には向かない場合があります。

パターンB:請求書払い(業界標準) 月末締め・翌月払いなど、業界慣行に合わせた掛け払い。取引先ごとの与信枠設定が必要です。未払いリスクを抑えるため、新規参加者は最初の3〜6ヶ月は即時決済のみとし、実績を積んでから掛け払いに移行する設計も有効です。

パターンC:組合保証(信頼性最大) 組合が決済を保証する形式。出品者は必ず代金を受け取れますが、組合側の未払いリスク管理が必要です。取引実績が豊富な組合の老舗型で有効です。

与信管理の実装:

  • 新規会員:与信枠なし(即時決済のみ)
  • 実績3ヶ月以上:与信枠50万円
  • 実績1年以上・優良評価:与信枠200万円
  • 長期優良取引先:個別交渉で与信枠設定

要素5:情報開示の水準

「何を公開し、何を非公開にするか」の設計です。

公開すべき情報:

  • 出品商品の仕様・状態
  • 入札の開始価格・現在の最高入札額
  • 入札終了時刻
  • 出品者の評価・過去の実績

非公開にすべき情報:

  • 現在の最高入札者の企業名(競合他社に知られたくない)
  • 出品者の仕入れ原価
  • 個別の取引条件交渉の内容

BtoBでは「現在の最高入札額は表示するが、入札者名は非公開」という設計が標準的です。競合他社に「誰が何をいくらで買っているか」が見えると、入札を控える参加者が増えます。

要素6:フィードバック・評価制度

継続的な信頼関係を構築するために、取引後の相互評価制度を設けます。

評価制度の設計:

  • 出品者への評価:商品の状態説明の正確さ・発送の速さ・対応の丁寧さ
  • 入札者への評価:支払いの速さ・連絡の対応・返品要求の妥当性
  • 評価の累積が「信頼スコア」として表示される
  • 一定以上のネガティブ評価は参加資格の見直し対象

この制度があることで、取引の両当事者が誠実に行動するインセンティブが生まれます。

要素7:データの活用と会員への情報提供

蓄積した取引データを会員に提供することが、組合の付加価値を高めます。

提供できる情報の例:

  • 月次マーケットレポート(業種別平均落札価格の推移)
  • 仕入れ動向(どのカテゴリへの需要が増加しているか)
  • 出品ランキング(高値がついた商材の傾向)
  • バイヤー動向(活発に購入している地域・業種)

この情報提供が「組合に入っていると業界動向がわかる」という価値になり、会員維持率・新規入会に貢献します。


6. 会員審査・与信管理の設計方法

クローズドオークションの信頼性は、参加者の質で決まります。審査と与信管理の具体的な設計を解説します。

会員審査のフロー設計

標準的な審査フロー(1〜2週間):

申請者が登録フォームを送信
        ↓
必要書類の提出(法人登記、許可証等)
        ↓
事務局による書類確認(3営業日)
        ↓
必要に応じて追加確認の連絡
        ↓
承認/否認の通知メール
        ↓
承認者のみオークション参加可能に

審査に必要な書類(業種別):

業界 必須書類 確認ポイント
畜産・農業 農業経営体証明、組合加盟証明 実際の農業従事者か
中古品取引 古物商許可証、法人登記簿 許可番号の有効性
食品卸 食品衛生責任者証明、営業許可証 許可の有効期限
建設業 建設業許可証、法人登記簿 許可業種の確認
全業種共通 法人登記簿謄本(6ヶ月以内) 法人の実在確認

審査基準の明文化: 審査基準を明確にし、審査を担当する事務局スタッフが一貫した判断をできるよう、内部基準書を作成します。「どういう申請者は承認し、どういう申請者は否認するか」の基準が曖昧だと、担当者によって判断がブレます。

与信管理の実装

BtoBで最も避けたいのは「落札後の未払い」です。与信管理で対策します。

与信枠の段階的設定例:

会員ステータス 与信枠 条件
新規会員 0円(即時決済のみ) 加入後3ヶ月間
一般会員 最大50万円 実績3ヶ月以上・評価良好
優良会員 最大200万円 実績1年以上・未払いゼロ
プラチナ会員 個別設定 取引実績3年以上・特別審査

未払い対策の仕組み:

  • 落札後3営業日以内に支払いがない場合、自動催促メール送信
  • 7営業日以内に未入金の場合、事務局から電話連絡
  • 14営業日以内に解決しない場合、参加資格の一時停止
  • 回収不能と判断した場合、ブラックリスト登録と与信枠のゼロリセット

この仕組みを明示することで、参加者全員に「きちんと支払わないと資格を失う」という緊張感が生まれ、未払い率が低下します。


7. 導入ロードマップ:合意形成から本稼働まで

組合・業界団体がクローズドオークションを導入する際、最も時間がかかるのは「合意形成」です。技術的な構築より、人を動かすプロセスを丁寧に設計します。

フェーズ0:合意形成(1〜3ヶ月)

ステップ1:問題意識の共有

理事会・総会で「外部プラットフォームへの手数料流出額」「取引データが組合に蓄積されていない現状」を数字で示します。抽象的な話より「組合員全員の手数料合計は年間○○万円」という具体的な数字が説得力を持ちます。

ステップ2:先行事例の提示

同業他組合・他業界の成功事例を資料にまとめて提示します。「○○農協がオンラインセリを導入してコストを420万円削減した」という事例は、賛同を得やすいです。

ステップ3:ワーキンググループの設置

「賛成派だけでなく、懐疑的な意見を持つ理事も含めた」検討ワーキンググループを設置します。最初から反対派を排除すると、後で大きな抵抗を受けます。

ステップ4:試験導入の提案

「全面移行」ではなく「まず3ヶ月のパイロット運用」を提案します。「うまくいかなければやめればいい」という逃げ道を作ることで、反対意見が和らぎます。


フェーズ1:システム準備(2〜3ヶ月)

やること:

  • システムの選定・契約(月額コストと機能の確認)
  • 組合サイトのドメイン取得・サイト設計
  • 参加資格・審査フロー・利用規約の策定
  • 事務局スタッフへのトレーニング

重要なポイント: 利用規約は弁護士または法務担当者にチェックしてもらいます。特に「責任の範囲」(落札後のトラブルで組合がどこまで責任を負うか)の条文は、後のトラブルを防ぐ重要な箇所です。


フェーズ2:パイロット運用(1〜3ヶ月)

対象: 先行して参加に同意した会員10〜20名程度。技術的な問題・運用上の課題をこの段階で洗い出します。

実施内容:

  • 会員審査フローの動作確認
  • 出品・入札・落札・決済の一連フローのテスト
  • 参加者からのフィードバック収集
  • 問題点の修正

KPI(パイロット期間中に確認すること):

  • 参加登録の完了率(申請した人の何%が審査通過まで完了したか)
  • 出品数と落札率(出品した商品の何%が落札されたか)
  • システムトラブルの発生頻度
  • 参加者の操作で困った点のフィードバック

フェーズ3:全会員への公開(本稼働)

告知・移行支援:

  • 全会員向け説明会(オンライン・対面の両方を開催)
  • 操作マニュアルの配布(動画チュートリアルが特に有効)
  • 電話・メールでの個別サポート窓口の開設(最初の3ヶ月は手厚く)
  • 「まず見るだけ」の期間を設け、入札に不慣れな会員の心理的ハードルを下げる

スケジュール目安:

フェーズ 期間 主な作業
フェーズ0:合意形成 1〜3ヶ月 理事会・ワーキンググループ
フェーズ1:システム準備 2〜3ヶ月 選定・構築・規約策定
フェーズ2:パイロット運用 1〜3ヶ月 先行会員10〜20名で試行
フェーズ3:全会員公開 3ヶ月目以降 本稼働・サポート体制稼働
定着・改善 継続 データ分析・機能改善

合意形成から本稼働まで、早くて6ヶ月・標準的には9〜12ヶ月を見込みます。


8. よくある反対意見とその回答

導入検討の場では、必ずいくつかの反対意見が出ます。それぞれに対する論理的な回答を準備しておきましょう。

反対意見1:「デジタルが苦手な会員はどうするのか」

回答: オンラインオークションへの移行は、スマートフォンを使えない会員を排除する意図はありません。まず「デジタルに慣れた会員から先行参加」してもらい、成功事例を作ります。その事例を見た他の会員が「自分もやってみよう」と動き始めます。また、操作に不慣れな会員向けに、事務局が代理入札のサポートをする期間を設けることも有効です。「完全移行」を求めるのではなく、「参加したい人から参加できる」という設計にすることで、反対を和らげられます。

反対意見2:「システムの維持コストを誰が負担するのか」

回答: 組合が運営するオークションで取引手数料(取引額の1〜3%)を設定すれば、取引量に応じた収益が生まれます。この収益でシステム維持コストを賄い、余剰分を会員サービスに還元する設計が可能です。月商が1,000万円の組合であれば、1%の手数料で月10万円・年120万円の収益が生まれ、多くのプランのシステム維持費を上回ります。「組合がコストを負担する」のではなく「取引量が増えるほど収益が増える」構造を作れます。

反対意見3:「既存の取引関係が崩れないか」

回答: クローズドオークションは、既存の直接取引を妨げるものではありません。「オークション経由の取引」と「従来の相対取引」は並行して存在できます。むしろ、オークション経由で適正価格が形成されることで、相対取引の「ざっくりした値決め」が市場価格に基づいて適正化される効果があります。既存の長期取引関係を維持しながら、新しい売買チャネルとして機能します。

反対意見4:「競合他社も同じプラットフォームを使うことになる」

回答: これは「業界全体のパイを大きくする」という視点で考えると、むしろメリットです。競合同士が同じプラットフォームで取引することで、業界外の購買者が「ここに来れば業界全体の商品が集まっている」と認識します。個社が個別にサイトを作るより、業界団体がプラットフォームを持つ方が、業界外からのバイヤー獲得に圧倒的に有利です。また、「どの商品が高値をつけるか」という情報は会員全員に有益で、業界全体の底上げになります。

反対意見5:「システム会社が倒産したらどうなるのか」

回答: これは正当なリスクです。対策として、「データのエクスポート機能があるか」「会員情報・取引履歴をCSVで定期的にバックアップできるか」を契約前に確認します。データが手元にあれば、万一のサービス終了時でも別のシステムに移行できます。また、運営実績のある会社(5年以上の運営・複数業界への導入実績)を選ぶことで、このリスクを低減できます。


9. まとめ:組合が「取引インフラ」を握ることの意味

事例の成果を振り返る

事例 主な成果
畜産農協 参加業者3.2倍・価格+18%・コスト年間420万円削減
漁協組合 参加業者4.7倍・価格+22%・廃棄率8.3%→1.2%
和牛生産組合 参加バイヤー9倍・価格+15%・輸送コスト年間120万円削減
建機業界団体 在庫回転2.5倍・トラブル件数70%削減・新規取引先年180社

これらの成果の共通点は、「市場の参加者が増えた」ことです。地域に閉じていた取引が全国に開かれ、競争が生まれ、価格が適正化され、廃棄・滞留が減った。それだけで、業界全体の富が増加しています。

組合が持つべき「取引インフラ」という概念

組合・業界団体の本来の役割は、業界全体の利益を守ることです。

外部プラットフォームに取引を依存することは、自分たちの業界の「市場ルール」「価格形成」「取引データ」を外部に委ねることを意味します。その外部プラットフォームが手数料を上げれば、会員全員が影響を受けます。規約が変われば、業界全体の取引慣行が揺らぎます。

自前のクローズドBtoBオークションを持つことは、単なるコスト削減策ではありません。業界の取引インフラを自分たちの手に取り戻すという、業界の自立と持続性に直結した戦略的な選択です。

今すぐできる3つのアクション

アクション1(今月):現状把握 組合員の外部プラットフォーム利用状況と手数料負担額を調査します。簡単なアンケートを実施するだけで、「年間○○万円が業界外に流出している」という数字が見えてきます。この数字が、合意形成の出発点になります。

アクション2(1〜2ヶ月以内):先行事例の収集 同業他組合・他業界でのクローズドオークション導入事例を収集します。「他の組合がやっている」という事実は、最も説得力のある材料です。

アクション3(3ヶ月以内):ワーキンググループの設置 理事会に「デジタル取引基盤検討委員会」などの名称でワーキンググループの設置を提案します。旗振り役が一人で動くより、組織的な検討体制を作ることで、合意形成のスピードが上がります。

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