オークションが"新しいチームビルディング"を生む——社内オークションで変わる組織の絆
目次
- なぜ今、社内オークションが注目されているのか
- 社内オークションが組織にもたらす3つの効果
- 社内オークションの2つの形——「福利厚生型」と「業務改革型」
- 事例:ディスコ「Will会計」——仕事を"落札"する人事制度
- 事例:ウェイブ「ウェイブオークション」——全チーム対抗の社内イベント
- 社内オークションを検討する際の5つのポイント
- よくある質問
- まとめ:オークションは組織のコミュニケーションを再デザインする
1. なぜ今、社内オークションが注目されているのか
課題1:部署間のサイロ化とコミュニケーション不足
多くの組織で、「部署が違うと顔も名前も分からない」という状態が生じやすくなっています。特にリモートワークの普及により、偶発的な交流の機会が減少している面があります。社員同士の交流が減れば、組織全体としての一体感や帰属意識の低下につながることがあります。
課題2:モチベーションの「見える化」の難しさ
従来の人事評価制度では、上司の主観的な評価に偏りがちで、社員が「自分の貢献が正しく評価されている」と感じにくいという課題が指摘されることがあります。
課題3:社内イベントのマンネリ化
社内イベントを開催しても、「毎回同じメンバーが集まるだけ」「参加者が年々減っている」といった声は珍しくありません。新しい仕掛けがない限り、社員の関心を引き続けることは難しいのが実情です。
2. 社内オークションが組織にもたらす3つの効果
効果1:主体性を引き出す
オークションは能動的な参加を前提とした仕組みです。社員は「与えられたものを受け取る」のではなく、「自分で選び、自分の判断で競り落とす」という体験を得ます。この主体性は、仕事へのエンゲージメントを高める要素の一つになり得ます。
効果2:交流を自然に生む
オークションには、部署や役職の壁を越えた参加が生まれやすい面があります。同じ目標(賞品や仕事の落札)に向かって戦略を練るプロセスが、自然なコミュニケーションを促進することがあります。
効果3:公平性を可視化する
オークションは、ルールが明確で透明性が高い仕組みです。誰がいくらで落札したかが可視化されるため、不公平感が生まれにくくなります。人事評価や業務配分に活用すれば、「上司の目」だけに頼らない評価の仕組みを構築できる可能性があります。
3. 社内オークションの2つの形——「福利厚生型」と「業務改革型」
社内オークションには、大きく分けて2つのアプローチがあります。
タイプA:福利厚生型——楽しみながら絆を深める
社員同士の交流促進や組織の一体感の醸成を目的とし、イベントとしてのオークション(チーム対抗、賞品競りなど)を行う形式です。参加のハードルが低く、楽しみながら自然に交流が生まれることが特徴です。
タイプB:業務改革型——仕事そのものをオークション化する
業務の最適配分や社員の主体性の向上を目的とし、社内オークションで業務を"落札"する仕組みを取り入れる形式です。社員が自らの意思で仕事を選択し、その対価を得るという、人事制度そのものに関わるアプローチです。
4. 事例:ディスコ「Will会計」——仕事を"落札"する人事制度
半導体製造装置メーカーのディスコは、高い収益性で知られる企業です。同社は社内通貨「Will」を用いた独自の管理会計手法「Will会計」を採用しています。
仕事を"落札"する仕組み
ディスコの公式採用サイトによると、Will会計のもとでの業務の進め方の代表例が「社内オークション制度」です。公開された仕事に対して「これくらいのWillで担当したい」という意志を示して落札する仕組みで、人気のある仕事は価格が下がっていき、逆に人気のない仕事は価格を上げないと落札されにくくなります。出品者と希望者双方の合意によってWillの価格が決まり、業務が始まります。
社員は仕事を遂行することでWillを獲得して「収入」を得る一方、自分の人件費や備品使用料、他者への仕事依頼費は「支出」となります。この収支に基づき、賞与額が変動する仕組みです。報道によれば、この制度により賞与のWill連動分の比率が高まっており、年収4,000万円を超える社員も存在するとされています。
この仕組みは、社員が多くのWillを稼ぐ働き方のみを推奨するものではなく、育児中の社員が早く帰れる仕事を選ぶなど、ライフスタイルや状況に応じた多様な働き方が認められている点も特徴です。加えて、個人の収支に応じた経費決裁の仕組みや、業務遂行に必要な費用を従業員から募る社内クラウドファンディングのような制度も組み合わされており、社員の納得感を生む工夫が重ねられています。
5. 事例:ウェイブ「ウェイブオークション」——全チーム対抗の社内イベント
IT・コンテンツ企業のウェイブでは、「ウェイブオークション」という社内交流イベントを実施しています。同社の人事ブログによると、企業理念と事業目標をつなぎ、社員同士の交流を促進する目的で、定期的な「イベントデー」の一環として開催されました。
仕組み——クイズとオークションの組み合わせ
全チーム対抗の「格付けバトル」で社内通貨「ウェイブマネー」を稼ぎ、そのウェイブマネーを使ってオークションで豪華賞品を競り落とし、獲得した商品で懇親会を行うという流れです。チームは所属部署が異なるメンバーで編成されるため、普段はあまり一緒に仕事をする機会が少ないメンバー同士の交流の機会になったとされています。
こうした社内イベント型のオークションは、参加のハードルが比較的低く、部署や役職を越えた自然な交流を生み出す手段として参考になる事例です。s
6. 社内オークションを検討する際の5つのポイント
ポイント1:目的を明確にする
社内オークションを導入する前に、何のために行うのかを明確にしましょう。福利厚生・交流促進が目的ならイベント型が、業務改革・評価制度改革が目的なら制度型が、それぞれ適していると考えられます。
ポイント2:社内通貨(ポイント)の設計を丁寧に行う
取得方法、1ポイントあたりの価値、有効期限、流通量など、通貨設計は成否を左右する重要な要素です。ディスコのWillは賞与に直結するリアルな価値を持つ一方、ウェイブのウェイブマネーはイベント内で使うゲーム感覚の通貨という違いがあります。自社の目的に応じた設計が必要です。
ポイント3:参加のハードルを低くする
特に初回は、誰でも気軽に参加できる設計が重要です。ルールをシンプルにする、説明会やデモンストレーションを実施するといった工夫が考えられます。
ポイント4:可視化とフィードバックを徹底する
誰が何を落札したか、結果はどうだったかを可視化し、フィードバックを行うことが、次回への参加意欲につながります。
ポイント5:継続的に改善する
一度実施して終わりにせず、参加者アンケートなどを通じて社員の声を反映し、規模や対象を段階的に広げていくことをおすすめします。
7. よくある質問
Q1. 社内オークションは、どんな規模の企業でも導入できますか?
A. 企業規模を問わず検討できますが、まずは小規模なイベント型から試し、手応えを見ながら拡大していく進め方が現実的です。
Q2. 業務改革型の社内オークションは、導入のハードルが高いですか?
A. ディスコのような制度は長年かけて磨き上げられたものであり、一朝一夕に同じ規模で導入するのは難しいと考えられます。まずは限定的な範囲で試験導入し、段階的に広げる方法も検討に値します。
Q3. 社内通貨の価値はどう決めればよいですか?
A. 目的によって異なります。実際の報酬に連動させる場合は慎重な制度設計が必要ですが、イベント限定の通貨であれば、比較的自由に設計できます。
Q4. 社内オークションが形骸化しないためには、どうすればよいですか?
A. 目的を明確にした上で、参加者の声を継続的に反映し、ルールや内容を改善し続けることが重要です。
Q5. 福利厚生型と業務改革型、どちらから始めるべきですか?
A. 多くの場合、まずは参加のハードルが低い福利厚生型のイベントから始め、組織の反応を見ながら業務改革型の検討に進む方が無理がないと考えられます。
Q6. 導入効果はどのように測定すればよいですか?
A. 参加率、参加者アンケートによる満足度、部署間の交流機会の増加など、定性・定量の両面から把握することをおすすめします。
8. まとめ:オークションは組織のコミュニケーションを再デザインする
この記事のポイント
1. 社内オークションには「福利厚生型」と「業務改革型」の2つのアプローチがある 目的に応じて、イベント型か制度型かを選択できます。
2. ディスコの「Will会計」は、社内オークションで仕事を落札する人事制度である 社員が自らの意志で仕事を選択し、その対価を得ることで、主体性の向上につながっているとされています。
3. ウェイブの「ウェイブオークション」は、部署の壁を越えた交流を生む社内イベントである ゲームとオークションを組み合わせた仕掛けが、自然な交流を生み出しています。
4. 社内オークションは「主体性」「交流」「公平性」という3つの効果をもたらし得る 組織が抱えるコミュニケーション不足やモチベーションの課題への一つのアプローチになります。
5. 導入の成功には「目的の明確化」「通貨設計」「参加のハードル」「可視化」「継続的改善」が鍵になる これらを意識することで、単なるイベントを超えた取り組みにつながる可能性があります。
社内オークションは、単なる福利厚生の新しい形にとどまらず、組織のコミュニケーションのあり方を見直すきっかけになり得ます。自社の課題や目的に合わせて、無理のない範囲から検討してみてはいかがでしょうか。